芸能人(個人)に支払う報酬に係る源泉徴収(源泉所得税)
今週は、源泉所得税のことを書いています。
普段のお仕事で取り扱っている非居住者等への支払いに関するものじゃなくて、シンプルに国内のお話(居住者への支払い)で、今回は、芸能人(個人)に支払う報酬に係る源泉徴収について。
Table of Contents
1. 芸能人の報酬に源泉徴収は必要
芸能人(居住者である個人)に役務提供に関する報酬(芸能人の役務の提供を内容とする事業を行う者のその役務提供に関する報酬・料金)を支払う場合、源泉徴収は必要でしょうか?
答えは… 所得税(及び復興特別所得税)を源泉徴収する必要があります。
源泉徴収すべき所得税額(及び復興特別所得税)の額は、二段階税率で計算し、支払金額(源泉徴収の対象となる金額)が100万円以下の部分は10.21%、100万円超の部分は20.42%です。
なお、消費税等の取扱いについては、原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象としますが、請求書等において、消費税等が明確に区分されている場合には、本体部分(報酬の額)のみを源泉徴収の対象とすることができます。
2. 芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬・料金とは
上記の「芸能人の役務の提供を内容とする事業に係る当該役務の提供に関する報酬・料金」とは、不特定多数の者から受けるものを除き、芸能人の役務の提供に関して受ける対価たる性質を有する一切のものをいいます。
そのため、通達では、以下のような対価も含まれることとされています。
- 演劇を製作して提供する対価
- 芸能人を他の劇団や楽団等に供給することにより受ける対価
- 芸能人の出演を斡旋することにより受ける対価
斡旋料が含まれているのがポイントでしょうか。
なお、この場合の報酬・料金等には、旅費や宿泊費などの名目で支払われるものも含まれますが、報酬の支払者が直接、交通機関やホテル等に支払う交通費や宿泊費などで、その金額が通常必要な範囲内のものであれば、源泉徴収の対象に含める必要はありません。
3. 源泉徴収の対象に含まれるもの
もう少し具体的に、上記の「芸能人の役務の提供を内容とする事業を行う者のその役務提供に関する報酬・料金」には、例えば、以下の役務の提供を内容とする事業を行う者のその役務提供に関する報酬・料金が含まれます。
- 映画や演劇の俳優
- 映画監督や舞台監督
- 演出家
- 放送演技者
- 音楽指揮者
- 楽士
- 舞踊家
- 歌手
他にもいろいろありますが、上記は私が見たことがあるものです。
なお、「源泉徴収のあらまし」だと、全般的に言葉が古くて、例えば、プロデューサーも「プロジューサー」って書いてあったりします。果物や野菜からジュース作るのがめちゃくちゃ上手い人かと思いますよね。
それはそれとして、居住者への支払いに関して言うなら、芸能人の範囲は結構広いので、迷ったら源泉徴収しておいたほうが無難だとは思います。
4. 源泉徴収の対象に含まれないもの
少し話が変わりますが、上記のとおり、「芸能人の役務の提供を内容とする事業を行う者のその役務提供に関する報酬・料金」には、「不特定多数の人から受けるもの」は含まれません。
例えば、個人(個人事業主)が自ら主催して演劇等の公演を行うことにより、観客等から受ける入場料や観覧料等がこれに該当するので、こういうものは、観客等が源泉徴収をする必要はないということです(当たり前ですけど)。
また、通達では、個人事業主がその公演に係る客席等(の全部または一部)の貸切契約を締結することにより支払いを受ける対価もこれに該当するものとされています(つまり、源泉徴収は不要)。
例えば、企業が社員やその家族のために観劇会を催す場合に、個人が主催して行う公演について、一定期間を借り上げて、その借上料を一括して個人に支払うようなケースの話だと思います。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。