1. HOME
  2. ブログ
  3. 会計
  4. 会計一般
  5. 内部統制基準・実施基準の改訂(公開草案):基準の改訂箇所

BLOG

佐和周のブログ

会計一般

内部統制基準・実施基準の改訂(公開草案):基準の改訂箇所

今週は、内部統制のことを書いています。

今回は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」のうち、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」のほうの改訂箇所について。

勇気を出して読んでみたので、基準の構成に沿って書いていきます。

 

1. 内部統制の基本的枠組み

まずは「Ⅰ.内部統制の基本的枠組み」のセクションです。

(1) 内部統制の定義(報告の信頼性)

「内部統制の定義」について、現行の「財務報告の信頼性」という用語が「報告の信頼性」という用語に置き換わっています(「報告の信頼性」には「財務報告の信頼性」が含まれるという関係)。

これは、どうでもいい内容にも思えますが、サステナビリティ等の非財務情報に係る開示の進展やCOSO報告書の改訂を踏まえた改訂とされています。いや、やはり、どうでもいいのかもしれません。

ただし、金融商品取引法上の内部統制報告制度は、あくまで「財務報告の信頼性」の確保が目的だそうです。

深いですね。

(2) 内部統制とガバナンス及び全組織的なリスク管理

もう1つ、「内部統制とガバナンス及び全組織的なリスク管理」という項目が新設され、内部統制について、ガバナンスや全組織的なリスク管理(ERM)と一体的に整備及び運用することが重要等々の内容が追加されています。

スポンサーリンク

 

2. 財務報告に係る内部統制の評価及び報告

次に、「Ⅱ.財務報告に係る内部統制の評価及び報告」のセクションです。

(1) 財務報告に係る内部統制の評価とその範囲(監査人との協議)

「財務報告に係る内部統制の評価とその範囲」に「監査人との協議」という項目が新設されており、主に以下のような内容が記載されています。

  • 経営者は、評価範囲の決定前後に、当該範囲の決定方法及びその根拠等について、必要に応じて、監査人と協議を行っておくことが適切
  • 当該協議は、監査人による指摘を含む指導的機能の一環(評価範囲の決定はあくまで経営者が行う)

(2) 財務報告に係る内部統制の報告

もう1つ、「財務報告に係る内部統制の報告」の「評価の範囲、評価時点及び評価手続」という項目に、新たな内容が追加されています(以下の下線部分)。

① 財務報告に係る内部統制の評価の範囲(範囲の決定方法及び根拠を含む。)
特に、以下の事項について、決定の判断事由を含めて記載することが適切である。
イ.重要な事業拠点の選定において利用した指標の一定割合
ロ.評価対象とする業務プロセスの識別において企業の事業目的に大きく関わるものとして選定した勘定科目
ハ.個別に評価対象に追加した事業拠点及び業務プロセス

(出典:金融庁 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」の公表について (別紙1)財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)) https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20221215.html)

評価範囲の決定については、数値基準等の例示の取扱いも含めて、諸々議論されたようです。端的には、評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスを選定する指標について、例示されている「売上高等の概ね2/3」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」を機械的に適用すべきでないというお話です。「重要な事業拠点の選定において利用した指標の一定割合」を開示させる形で内部統制報告書の開示を拡充させるのも、その流れだと思います。

同じく、「財務報告に係る内部統制の報告」の「付記事項」に「前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合、当該開示すべき重要な不備に対する是正状況」という内容が追加されています。

スポンサーリンク

 

3. 財務報告に係る内部統制の監査

最後に「Ⅲ.財務報告に係る内部統制の監査」のセクションです。

(1) 内部統制監査と財務諸表監査の関係

「内部統制監査と財務諸表監査の関係」について、以下のような内容が追加されています。

  • 財務諸表監査の過程で識別された内部統制の不備には、経営者による内部統制評価の範囲外のものが含まれることがある
  • 監査人は、当該不備について内部統制報告制度における内部統制の評価範囲及び評価に及ぼす影響を十分に考慮する必要がある(また、必要に応じて、経営者と協議しなければならない)

これも評価範囲の決定に関係する内容ですが、端的には、経営者の評価範囲外で重要な不備が検出される事例が見られることへの対応のようです。海外子会社を見ていると、この点は何となく理解できます。

(2) 内部統制監査の実施

同じような話ですが、「内部統制監査の実施」の「評価範囲の妥当性の検討」という項目でも、以下のような内容が追加されています。

  • 監査人は、経営者により決定された内部統制の評価の範囲の妥当性を判断するために、経営者が当該範囲を決定した方法及びその根拠の合理性を検討しなければならない
  • この検討に当たっては、財務諸表監査の実施過程において入手している監査証拠も必要に応じて、活用することが適切

(3) 監査人の報告

もう1つ、「監査人の報告」の「内部統制監査報告書の記載区分」という項目について、「監査人は、内部統制報告書の記載について強調する必要がある事項及び説明を付す必要がある事項を内部統制監査報告書において情報として追記する場合には、意見の表明とは明確に区別しなければならない」という現行の内容の後に、以下の記載が追加されています。

ただし、内部統制報告書の内部統制の評価結果において、内部統制は有効でない旨を記載している場合は、その旨を監査人の意見に含めて記載することが適切である。

(出典:金融庁 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」の公表について (別紙1)財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)) https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20221215.html)

今日はここまでです。

では、では。

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

関連記事

佐和周のブログ|記事一覧

スポンサーリンク