海外子会社の未収税金に関する問題(海外子会社管理の会計・税務・財務ケース50)
最近あまり本業に関することを書いていなかったので、少しだけ。
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これだけは押さえておこう 海外子会社管理の会計・税務・財務ケース50
6月くらいに以下の本が出ました。
この本、私が実務でよく遭遇する問題について、簡単にまとめて書いたものです。今日もそういう問題について書きたいと思います。
ケース29. 未収税金の還付可能性をチェックする
本は50のケースで構成されているのですが(こちらに全ケースを挙げています)、そのうちの「ケース29」は、海外子会社の「未収税金の還付可能性をチェックする」というものです。
まず、要点は以下のとおりです。
以下では、特に新興国の子会社における未収税金の意味合いについて、少し書いてみます。
未収税金の意味合い
日本でも、法人税等の中間納付や消費税の還付等により、財務諸表に未収税金が計上されることはありますが、特に新興国における未収税金の意味合いは、日本のそれとは大きく異なります。
日本で未収税金の回収可能性が問題になることはほぼないですが、新興国の子会社においては、必ずしも還付が受けられるとは限りません。還付ポジションにある付加価値税(VAT)などは、特に滞留しやすいといえます(輸出企業のように恒常的にinput VATが超過するケース)。
滞留する理由としては、還付前の税務調査が終わらず、なかなか還付を受けられないとか、それ以前に税務調査が始まらないとか、そもそも面倒だから現地スタッフが還付申請を行わないとか、色々なパターンがあります。
未収税金の問題の捉え方
未収税金というのは、端的には税金の前払いなので、あまりに滞留した未収残高が積みあがってくると、資金繰りの問題にも波及します。
つまり、状況によっては、単純に税務だけの問題ではなくなってくるので、日本親会社としても放置できません。
未収税金が発生している場合の対応
未収税金については、できるだけそれが生じないように対応することが一番の対策ですが、上記の輸出企業におけるVAT還付のように、そもそも不可避のケースもあります。
日本親会社の立場では、未収税金が滞留している場合、その理由を海外子会社に確認する必要がありますが、仮に現地の経理スタッフが「この国では(この地域では)税金の還付を受けられない」と主張した場合であっても、それは鵜呑みにしないほうがよいと思われます。
というのも、個人的な経験上、同一国・同一地域であっても、還付を受けられている企業とそうでない企業に分かれていることが多々あるからです。
還付に成功している企業に共通しているのは、優秀な現地の経理スタッフの存在と思われます。端的には、税務調査に堪えられる実務レベルがあり、かつ、税法に則って「還付を受けられてしかるべき」という主張を通せるのであれば、還付は受けられるはずだからです。もちろん、それをサポートしている会計事務所の交渉力など、その他の要素もあると思いますが。
なので、費用対効果で対応を考える必要があります。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。