海外子会社の余剰資金の問題(海外子会社管理の会計・税務・財務ケース50)
最近あまり本業に関することを書いていなかったので、少しだけ。
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これだけは押さえておこう 海外子会社管理の会計・税務・財務ケース50
6月くらいに以下の本が出ました。
この本、私が実務でよく遭遇する問題について、簡単にまとめて書いたものです。
当たり前のことなのですが、本が出てからも、頻繁に同じような問題に遭遇します(笑)
「ここに書いてあるので、読んでください」で済めばいいのですが、現実はそう簡単ではないので。
ということで、今日はそういう問題について書きたいと思います。
ケース35. 余剰資金の有無をチェックする
本は50のケースで構成されているのですが(こちらに全ケースを挙げています)、そのうちの「ケース35」は、海外子会社の「余剰資金の有無をチェックする」というものです。
まず、要点は以下のとおりです。
以下では、こういうテーマでよく企業の方と話す内容に少しだけ触れます。
余剰資金が引き起こす問題
海外子会社が余剰資金を抱えることで起きやすい問題として、➀資金効率の問題は間違いなく重要ですが、もう1つ、➁不正リスク対応やガバナンス上の問題も重要です。
そもそも海外子会社の出金プロセスのコントロールは容易ではないので、自由に引き出せるキャッシュを持たせないことが最善のリスク管理ですし、経験上、自由になるお金があればあるほど、余計な経費を支払いがちだからです。
その他、本には➂対外的な問題として、外部の投資家などから配当圧力がかかるケースなどにも触れています。
まあ、普通の話なんですけど、グループとして余剰資金を持つのであれば、それは日本親会社(や地域統括会社)が持つべきであり、海外子会社が持つべきではないということですね。
余剰資金が溜まりやすい要因
海外子会社で余剰資金が溜まりやすい根本原因として、本に書いたのは、海外子会社の経営層のスタンスです。シンプルには、余剰資金を経営のバッファと考えているので、余裕資金を持ちたがる傾向があるということです。
でも、それとは全く別の視点で、そもそもグループとしての損益配分が歪んでいるケースもあります。
要は、限定的な機能やリスクしか持っていない海外子会社に多くの利益が配分されているような場合で、そうすると、自動的に現地に利益やキャッシュが蓄積されていきます。そういうところに限って、日本側の利益は薄かったりするので、経営上の問題としてだけではなく、移転価格税制上の問題としても考えるべきなんでしょうね。
本に書いてあること
本には、その他、「あるべき資金残高に関する協議」や「余剰資金の回収手段の検討」みたいな内容も書いてあるので、ご関心のある方はぜひ、書店などで手に取ってみてください。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。