インボイス制度:免税事業者が登録不要のパターン4つ
今日も、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。
(お仕事ではなく)個人的に受けた質問について。
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免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けなくてもいい場合
流れとしては、「免税事業者は適格請求書発行事業者の登録を受けたほうがいいか」という話の中で出た、「免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けなくてもいいケース」というテーマです。
答えとしては、「あんまりない」です。
ちょっと視点は異なりますが、以下の記事でも触れています。
以下では、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けなくてもいいケースについて、パターン分けしつつ、簡単にまとめます。
パターン1:取引先(得意先)が消費者のみの場合
まずは、取引先(得意先)が消費者だけの場合です。
インボイス(適格請求書)は、相手方の仕入税額控除に必要になるものなので、相手方が仕入税額控除を取らない場合には、適格請求書を発行する必要がありません。
なので、取引先が消費者だけであれば、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要もありません。
パターン2:取引先(得意先)が免税事業者の場合
同じ理由で、取引先(得意先)が免税事業者のみ(または消費者と免税事業者のみ)である場合も、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要はありません。
免税事業者の場合、仕入税額控除云々の前に、そもそも消費税の申告をしないので。
レアなケースかもしれませんが。
パターン3:取引先(得意先)が簡易課税制度を採用している場合
もう1つ、取引先(得意先)が課税事業者であっても、その取引先が簡易課税制度を選択していれば、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要はありません。
なので、得意先が消費者とか小さな企業(免税または簡易課税)で構成されていれば、適格請求書発行事業者の登録を受けなくていいかもしれません。
簡易課税を採用している場合、その取引先は、仕入税額控除は取るけれども、適格請求書を必要としません。単純にみなし仕入率を使って仕入控除税額を計算するだけなので。
ちなみに、簡易課税制度を選択できるのは、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者です。
パターン4:取引先(得意先)が優しい場合
取引先(得意先)が簡易課税制度を選択していない課税事業者の場合、仕入税額控除には適格請求書が必要です。
なので、それでも適格請求書発行事業者の登録を受けなくていいのは、その取引先が「免税事業者のままでいいよ」と言ってくれた場合ですね。
ただし、一定期間は経過措置があって、免税事業者からの仕入でも一定割合(80%→50%)の仕入税額控除が取れるので(詳細はこちら)、そういう優しい取引先がいるかもしれません。
(免税事業者と取引する)取引先の側の視点は、こちらをどうぞ。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。