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グローバル・ミニマム課税

グローバル・ミニマム課税:当期純損益金額に対する調整② 除外配当

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。

今回は、(特例適用前)個別計算所得等の金額の計算という文脈で、当期純損益金額に対する調整の2つ目、除外配当に関する調整について。

 

1. 調整内容要約

まず、さっぱりと調整(減算)内容を書くと、以下のとおりです。

+(該当なし)
-除外配当の額(当期純損益金額に係る収益の額としている金額)
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2. 除外配当とは

まず、除外配当とは、端的には、短期保有ポートフォリオ株式「以外」の所有持分に係る利益の配当をいいます。

ここでいう「短期保有ポートフォリオ株式」とは、特定多国籍企業グループ等の保有割合が低く、かつ、構成会社等の保有期間が短い一定の所有持分のことです。

正確にいうと、除外配当とは、構成会社等の他の会社等に対する所有持分で、以下の(1)非ポートフォリオ要件か(2)1年以上所有要件のいずれかを満たすものについて受ける利益の配当の額で、当期純損益金額に係る収益の額としている金額をいいます。

(1) 非ポートフォリオ要件

その利益の配当を受ける直前における以下の割合の全てが10%以上であること

①(その構成会社等の)特定多国籍企業グループ等に属する全ての会社等が有する当該他の会社等に対する所有持分に係る「利益の配当を受ける権利」に基づき受けることができる金額の合計額が、当該他の会社等に対する所有持分に係る権利に基づき受けることができる金額の総額のうちに占める割合(注)

②(その構成会社等の)特定多国籍企業グループ等に属する全ての会社等が有する当該他の会社等に対する所有持分に係る「残余財産の分配を受ける権利」に基づき受けることができる金額の合計額が、当該他の会社等に対する所有持分に係る権利に基づき受けることができる金額の総額のうちに占める割合

③(その構成会社等の)特定多国籍企業グループ等に属する全ての会社等が有する当該他の会社等に対する所有持分に係る「議決権」の数の合計数が、当該他の会社等に対する所有持分に係る議決権の数の総数のうちに占める割合

(注) 利益の配当を受ける権利が、「各対象会計年度の直前の対象会計年度に生じた利益の配当を受ける権利」と「それ以外の権利」とに区分されている場合には、その両方の割合です。日本では馴染みのない制度ですけど。

念のためですが、非ポートフォリオ要件のほうは、「特定多国籍企業グループ等に属する全ての会社等」を基準に判定します(上記のとおりです)。

(2) 1年以上所有要件

その構成会社等がその利益の配当を受ける日まで引き続き1年以上その所有持分を有していたこと

こちらは、非ポートフォリオ要件とは異なり、「その構成会社等」だけで判定します。言い換えると、構成会社等ごとに判定を行うということです。

なので、1年以上所有要件のほうは、他の構成会社等から所有持分を取得した場合の判定方法が通達(法基通18-1-50)で定められてたりします。

(3) その他

ちなみに、同じ特定多国籍企業グループ等に属する他の構成会社等からの利益の配当で、支払側の構成会社等の当期純損益金額に係る費用の額となっている部分は、除外配当の範囲からは除かれます。

受取側と支払側で二重控除っぽくなってしまうからですね(実効税率の計算が絡むので、実際にはそんな単純な話ではないですが)。

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3. 除外配当の減算

整理すると、除外配当は、上記(1)の非ポートフォリオ要件か上記(2)の1年以上所有要件のいずれかを満たすものです(なので、端的には、短期保有ポートフォリオ株式「以外」の所有持分に係る利益の配当ということです)。

この「除外配当」については、当期純損益金額から減算する調整を行います。一方で、対応する(その利益の配当に係る)費用については調整不要です(法基通18-1-49)。

配当については、多くの国で、一定の要件(保有割合や保有期間)を満たすものは益金不算入になるので、除外配当の減算については、それを踏まえた調整と整理できます。もちろん、配当に係る益金不算入の要件は国によって異なりますが、上記の除外配当の要件は、ある意味でそれを一般化したものと捉えておけばいいのかもしれません。

まとめると、10%以上の保有割合の株式(ポートフォリオ株式に該当しない)からの配当や保有期間1年以上の株式からの配当(短期保有に該当しない)については、当期純損益金額から減算調整します。なので、個別計算所得等の金額(実効税率の分母)には含めないってことで。

4. 除外配当の計算特例

除外配当の計算方法は上記のとおりですが、上記2(2)の1年以上所有要件の判定を行わず(めんどくさいので)、上記2(1)の非ポートフォリオ要件だけで「除外配当」の判定を行えるという特例があります。

詳細はまた今度書きますが、イメージとしては、その保有するポートフォリオ株式に係る利益の配当は、すべて除外配当しては扱わない(つまり、個別計算所得等の金額に含める)という選択肢があるということです。

除外配当については、そもそもマイナーな調整項目の中ではメジャーなほうだと思うので、今日はちょっと真面目に書いてみました。

今回はここまでです。

では、では。

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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