グローバル・ミニマム課税:特定組織再編成により資産または負債の移転が行われた場合の当期純損益金額の調整

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。
今回は、個別計算所得等の金額の計算という文脈で、特定組織再編成により資産または負債の移転が行われた場合の当期純損益金額の調整について。
Table of Contents
1. 税引後当期純損益金額に対する主な調整
構成会社等の当期純損益金額の計算に際しては、税引後当期純損益金額がベースになりますが、それに対して、いくつか調整を行う必要があります。
主な調整内容は「簿価の調整」ですが(PEや導管会社等のことを無視すれば)、これは、会計数値(個別P/L)を基礎とする税引後当期純損益金額をそのまま使ってしまうと、国別実効税率が歪んでしまう場合に、会計上の簿価とは異なるベースで損益を計算するイメージです。
具体的な調整項目としては、以下があります。
(2) 特定組織再編成により資産または負債の移転が行われた場合の当期純損益金額の調整
(3) プッシュダウン会計が適用される場合の当期純損益金額の調整
2. 特定組織再編成により資産または負債の移転が行われた場合の当期純損益金額の調整
前回は、(1) 独立企業間価格などに基づく当期純損益金額の調整について確認したので、今回は、(2) 特定組織再編成により資産または負債の移転が行われた場合の当期純損益金額の調整について。
この調整は、単純にいうと、日本でいう適格再編っぽいものにより資産・負債を移転した場合、移転した側の移転損益はないものとする(そうなるように調整する)という内容です。また、それとセットで、移転を受けた側は、「移転側の再編直前の税務価額」により資産・負債を取得したものとされます。
前提として、グループ内で(つまり、特定多国籍企業グループ等の構成会社等の間で)資産または負債を移転した場合、その会計上の移転損益は、当期純損益金額の金額に含まれる場合があります。
一方、日本の適格再編もそうですが、税務上は課税の繰延べを認めている国も多いので、それによって国別実効税率の計算が歪まないように、その税務上の取扱いに合わせて当期純損益金額を計算する趣旨です。
3. 特定組織再編成とは
上記の「特定組織再編成」とは、組織再編成(合併・分割・清算など)のうち、以下の要件の全てを満たすものをいいます。
あ、「移転会社等」は組織再編成により移転を行った会社等、「取得会社等」はその移転を受けた会社等のことです。
組織再編成により移転を受けた資産・負債に係る対価として交付される資産の全部または大部分と認められる部分の資産が、取得会社等(またはその取得会社等と特殊の関係にある会社等)に対する持分であること
(無対価の場合は、その持分の交付が省略されたと認められるものであること)
②非課税要件
移転会社等の所在地国の租税に関する法令において、組織再編成により移転した資産の移転に係る利益の額及び損失の額の全部または一部につき、益金の額及び損金の額に算入しないこととされていること
③取得価額に関する要件
取得会社等の所在地国の租税に関する法令において、組織再編成により移転を受けた資産の取得価額につき、移転会社等の組織再編成の直前の帳簿価額を基礎として計算することとされていること
日本の適格再編(グループ内再編)をイメージすれば、そんなに違和感のある内容じゃないと思います。
今回はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。