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グローバル・ミニマム課税

グローバル・ミニマム課税:移行対象会計年度前のグループ内取引等に係る当期純損益金額の調整

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。

今回は、個別計算所得等の金額の計算という文脈で、移行対象会計年度前のグループ内取引等に係る当期純損益金額の調整について。

 

1. 移行対象会計年度前のグループ内取引等に係る当期純損益金額の調整

前回まで、構成会社等の当期純損益金額の計算に際しての税引後当期純損益金額に対する調整のうち、「簿価の調整」的なものを見てきました。

PEや導管会社等のことは無視するとして、もう1つだけ調整の内容を確認します(どこに書こうか迷ったのですが)。

テーマとしては、移行対象会計年度前のグループ内取引等に係る当期純損益金額の調整です。

(1) 移行対象会計年度とは

まず、「移行対象会計年度前の」でいう「移行対象会計年度」という用語自体を確認します。

移行対象会計年度とは、構成会社等についていうと(共同支配会社等を無視すると)、ある国・地域(特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の全てが所在地国としていなかった国・地域)を特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等のいずれかが最初に所在地国としたその構成会社等に係る対象会計年度をいいます。

その所在地国における構成会社等が特定多国籍企業グループ等に属することとなった最初の対象会計年度ということで、とりあえずこのブログではシンプルに考えて、制度の適用開始年度と考えることにします。

細かいことを言うと、移行期間CbCRセーフ・ハーバーの適用を受ける年度は移行対象会計年度に該当しない(なので、国・地域ごとにその年度が異なる)のですが。

(2) 調整の概要

次に、移行対象会計年度前のグループ内取引等に係る当期純損益金額の調整の内容について。

調整の概要としては、2021年12月1日から移行対象会計年度の開始の日の前日までの期間において、グループ内で(特定多国籍企業グループ等内で)棚卸資産以外の資産の移転取引等が行われた場合、資産の取得側の構成会社等は、移転側の移転直前の帳簿価額を引き継いで、その後の税引後当期純損益金額の計算を行うというものです(一定の例外はあります)。

趣旨をめっちゃ要約して書くと、「制度適用前にグループ内の資産移転で帳簿価額増額→制度適用後の減価償却費増加→当期純損益金額減少→実効税率上昇→国際最低課税額減少」という流れになるので、これを防止するために取得側で帳簿価額を増加させない(移転側の帳簿価額を引き継ぐ)ことになります。

棚卸資産が対象から除かれているので、固定資産のイメージで考えておくとわかりやすそうな気がします。

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2. 移行対象会計年度前における資産の帳簿価額の変更に係る当期純損益金額の調整

同じく、会計処理の基準の変更などによる資産の帳簿価額の変更についても、その変更がなかったものとみなす場合があります。

すなわち、2021年12月1日から移行対象会計年度の開始の日の前日までの期間において、一定の事由による会計上の帳簿価額の変更が行われた場合には、その帳簿価額の変更はなかったものとみなして、その後の税引後当期純損益金額の計算を行う必要があります。

趣旨は、上記のグループ内取引等の場合と同じです。

今回はここまでです。

では、では。

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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