10月1日をまたぐ取引に関するインボイス制度対応をわかりやすく
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)について、ここ数か月の議論のアップデートです。
今回のテーマも昨日の続きで、10月1日をまたぐ取引に関するインボイス制度対応です。
税務通信(3758号)にわかりやすい解説があったので、ちょっとだけご紹介します。
Table of Contents
1. 10月1日をまたぐ取引に関するインボイス制度対応
10月1日をまたぐ取引に関するインボイス制度対応のお話について、個人的には、仕入側の処理を考えるときに、売上側の処理が良く見えず、判断に困ることがあります。
この点、財務省の方の解説で、分かりやすいものがありました。
具体的には、「売手・買手の双方が令和5年10月1日以降に売上げ・仕入れを計上するものについて、インボイス制度が適用される」というコメントがあります(あくまでも一般論として、ということですが)。
2. 資産の譲渡等と課税仕入れの時期で見る4つのケース
税務通信の記事では、以下の4ケースについて、それぞれのインボイス制度対応が示されています。
ケース1:どちらも制度開始前
課税仕入れ:令和5年9月30日以前
➡ 区分記載請求書を保存
これは説明不要だと思います。
ケース2:どちらも制度開始後
課税仕入れ:令和5年10月1日以降
➡ インボイスを保存
これも説明不要だと思います。
問題は、10月1日をまたぐ取引として、次の2つのケースです。
ケース3:資産の譲渡等が制度開始前に先行
課税仕入れ:令和5年10月1日以降
➡ 区分記載請求書を保存
これはありがちなケースですが、「売手が出荷基準・買手が検収基準」みたいなパターンです。
この場合、資産の譲渡等の時期から、インボイス制度対応は不要で、これも難しくはない気がします。
ケース4:課税仕入れが制度開始前に先行
課税仕入れ:令和5年9月30日以前
➡ 区分記載請求書を保存
これが個人的には一番難しいケースでした(今でもよくわからない)。
課税仕入れのほうが早いということで、例として「保守費用などについて、短期前払費用として処理する場合」が挙げられています。
このケース4のように、買手が先行して短期前払費用として仕入税額控除を行っているものも、区分記載請求書等の保存で構わないそうです。
確かに仕入税額控除自体はインボイス制度開始前に行っているので、そうなるのかなという感じです。
資産の譲渡等は令和5年10月1日以降なので、売手にはインボイスの交付義務は課されるはずですが、買手からの求めがなければ交付する必要はないという整理のようです。
なるほど。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。