弁護士や弁護士法人に支払う報酬に係る源泉徴収の要否(源泉所得税)
少し間が空きましたが、今週は、源泉所得税のことを書きます。
慣れている非居住者等への支払いに関するものじゃなくて、シンプルに国内のお話(居住者への支払い)で、今回は、弁護士(個人)や弁護士法人に支払う報酬に係る源泉徴収について。
Table of Contents
1. 前提条件
このシリーズでは、報酬・料金等の支払者は法人または源泉徴収が求められる個人であることを前提にします。
実際には、支払者が個人で、給与の支払者でないとき(または常時2人以下の家事使用人のみに対する給与の支払者であるとき)は、一定の報酬・料金を除いて、源泉徴収をする必要がないためです。
2. 弁護士(個人)に支払う報酬
上記を前提に、弁護士(居住者である個人)に報酬を支払う場合、源泉徴収は必要でしょうか?
答えは… 所得税(及び復興特別所得税)を源泉徴収する必要があります。
源泉徴収すべき所得税額(及び復興特別所得税)の額は、二段階税率で計算し、支払金額(源泉徴収の対象となる金額)が100万円以下の部分は10.21%、100万円超の部分は20.42%です。
ちなみに、20.42%の部分は、「同一人に対し1回に支払われる金額が100万円を超える場合」には、その超える部分については、20.42%が適用されるので、基本的には支払いごとの判断です(詳細はこちら)。
(1) 源泉徴収の対象となる「報酬」に含まれるもの・含まれないもの
この場合の報酬には、旅費や宿泊費などの名目で支払われるものも含まれます(その業務に関するものなので)。
ただし、報酬の支払者が直接、交通機関やホテル等に支払う交通費や宿泊費などで、その金額が通常必要な範囲内のものであれば、源泉徴収の対象に含める必要はありません。
また、弁護士への支払いであっても、本来報酬の支払者が納付すべきものとされる登録免許税等であれば、源泉徴収の必要はありません。
(2) 消費税等の取扱い
報酬に係る消費税等の取扱いについては、原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象とします。
ただし、請求書において、消費税等が明確に区分されている場合には、本体部分(報酬の額)のみを源泉徴収の対象とすることができます。
消費税等はだいたい区分されているので、基本は本体部分だけが対象ですね。
3. 弁護士法人に支払う報酬
所得税法第204条による源泉徴収が必要になるのは、個人への支払いの場合です。
逆にいうと、法人への支払いには適用されないので、弁護士法人に支払う報酬については、源泉徴収は不要です。
ただ、個人的な経験では、法律事務所の場合、法人からの請求かと思いきや個人からの請求だったりもするので、源泉徴収の要否は確認したほうがいいケースもあるような気がします(知らんけど)。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。