三菱電機の「海外出向者給与の源泉徴収漏れ」報道に思う
今日は雑談です。
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三菱電機さんの源泉徴収漏れ報道
今朝、朝日新聞デジタルで、三菱電機さんの源泉徴収漏れの記事が出ていました。
税務調査において、「新型コロナの影響で一時帰国していた海外出向者に対する給与の源泉徴収漏れ」を指摘されたという内容です。
海外出向者給与の源泉徴収漏れはよくある話
海外出向者(非居住者)が一時帰国して日本で業務従事したとき、日本払いの給与(留守宅手当など)には源泉徴収が必要です。一般に、租税条約に短期滞在者の規定があっても、日本払いの給与には適用されないので。
これに関する源泉徴収漏れ自体は、別に珍しい話ではないです。というか、昔からよくあります。
国税庁は一応、FAQ(「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」)でも、取扱いを明記しています(以下のリンク)。
【追記】
「よくわからない」というクレームを頂いたので、昔セミナーで使った図を貼っておきます。短期滞在者免税により、図の右下部分は免税にできるかもしれませんが、今は図の右上部分の話をしています(別に制度を説明するつもりはないのですが)。
積極的に課税するべきものなのか
平時の課税ルールを前提とするなら、これはこれで正しいんでしょう。
また、専門家にとっては(少なくとも私にとっては)重要な課税事例ではあります。
ただ、一個人としての感想は別にあり、状況を踏まえれば、これに課税するのはどうなんでしょう?
コロナ禍における海外出向者の一時帰国に関して、当時、企業の方々がどれだけ苦労されたか、そういうのを分かったうえでのことなんですかね。まあ、ルールはルールなんで、それ以上は何も言えませんが。
海外出向者が現地で外国税額控除を取れれば、追徴税額丸々が税務コストというわけではないと思います。ただ、現地側の税務手続きやグロスアップの再計算も考えると、事務手間だけでかなりのコストになりそう。
なんかミスリードしようとしてない?
誰の肩を持つわけでもありませんが、個人的には、企業担当者の方への同情しかないです。
この事案自体は当然ながら存じ上げませんが、おそらく課税逃れといった類いのものではないはずです。しかも、大企業にとっての1億円ちょっとの源泉徴収漏れは、そこまで重要な話ではないように思います。
でも、報道されている他の事案に鑑みると、一般の人がこの報道を見てどう感じるかは、それとはだいぶ異なりそうです。媒体に対する偏見はよくないですが、何か読者をミスリードしようとする意図を感じてしまいました。
いつも思うことですが、そもそも、なぜ一企業の税務調査の情報が外部に洩れるんでしょうか?
同じ「漏れ」なら、源泉徴収漏れではなく、情報漏洩のほうをもっと問題視してほしいです(とうまいこと言ってみる)。
色々な意味で、久々にイラっとくる報道でした。
以上です。
【追記】
色々連絡が来て、「何でキレてるの?」とか「別にうまいこと言えてないから」みたいなコメントを頂きますが(笑)、私としては、それよりも、週末に「非居住者等への支払いに係る源泉徴収」について嬉々として話す皆さんのことが心配です。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。