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佐和周のブログ

グローバル・ミニマム課税

グローバル・ミニマム課税:納税義務者と申告・納付

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。

今回は、予備知識という位置付けで、グローバル・ミニマム課税における納税義務者について。

 

1. 納税義務者

日本におけるグローバル・ミニマム課税の制度では、特定多国籍企業グループ等に属する内国法人を対象に、各対象会計年度の国際最低課税額について、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税を課することとしています(「特定多国籍企業グループ等」という用語については、次回書きます)。

(1) 最終親会社等

これだけではわかりづらいのですが、国際最低課税額が発生しなければ納税しなくてよいので(申告も)、そう考えると、最終親会社等が納税義務者となるのが基本的な形です。グローバル・ミニマム課税の仕組みとしても、資本関係の上から課税していくので(いわゆる「トップダウン・アプローチ」)。

ただ、それ以外でも、中間親会社等と被部分保有親会社等については、国際最低課税額が発生するケースがあるので、納税義務者となりえます(暇な人は法法82の2①を読んでみてください)。

(2) 中間親会社等

日本にある中間親会社等のうち、国外に最終親会社等があって、その最終親会社等の所在地国がIIRを導入していない場合、上記のトップダウン・アプローチにより、日本の中間親会社等が納税義務者となる場合があります。

これについては、日本の最終親会社等(普通の企業)であれば、基本的に問題になりません。

(3) 被部分保有親会社等

一方、日本にある被部分保有親会社等については、最終親会社等の所在地国にかかわらず、また、所在地国におけるIIRの導入有無にかかわらず、納税義務者となる場合があります。

これは、「スプリット・オーナーシップ・ルール」という考え方で、被部分保有親会社等は外部に20%超持たれているので(詳細はこちら)、課税漏れが生じないよう、そこにIIRを優先して適用するイメージです。

中間親会社等の場合と異なり、日本に被部分保有親会社等がある場合、最終親会社等が日本にあっても、被部分保有親会社等のレベルで課税されるので、こちらは日本企業にとっても、結構重要な話だと思います。

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2. 対象会計年度

ちなみに、「各対象会計年度の国際最低課税額」というときの「対象会計年度」というのは、最終親会社等の連結会計年度のことで、もう少しちゃんと言うと、「多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結等財務諸表の作成に係る期間」をいいます。

3. 申告納付制度

日本におけるグローバル・ミニマム課税の制度は、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の制度」と呼ばれ、通常の法人税の制度とは別物として扱われます。

なので、申告や納付も通常の法人税とは別に行います。

具体的には、特定多国籍企業グループ等に属する内国法人は、対象会計年度において、グローバル・ミニマム課税の課税標準(国際最低課税額)がある場合、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月以内(適用初年度は1年6か月以内)に「国際最低課税額確定申告書」を提出し、税額を納付する必要があります(地方法人税もセットです)。

逆にいうと、普通の法人税とは違って、税額が生じない対象会計年度については、申告義務もないということです。

国際最低課税額に対する法人税について、税額は「各対象会計年度の国際最低課税額(課税標準)×90.7/100」で計算されますが、これに加えて、地方法人税の税額が「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の額(課税標準)×93/907」だけあるので、結局は各対象会計年度の国際最低課税額に丸々課税されることになります。

今回はここまでです。

では、では。

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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