グローバル・ミニマム課税:選択適用の調整項目⑤ 不動産の譲渡に係る個別計算所得等の金額の計算の特例

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。
今回は、選択適用が認められる調整項目の5つ目で、不動産の譲渡に係る個別計算所得等の金額の計算の特例について。
Table of Contents
1. 調整内容要約
まず、さっぱりと調整内容を書くと、以下のとおりです。
調整の概要:上記譲渡益を当該対象会計年度以前の5対象会計年度に配分するなどの調整
選択:国別・1年
2. 不動産の譲渡に係る個別計算所得等の金額の計算の特例
この特例は、構成会社等において不動産の譲渡益が生じた場合の話です。ただし、グループ内の譲渡によるものは除きます(「当該構成会社等の特定多国籍企業グループ等に属さない者に対する譲渡に限る」とされているので)。
そして、選択適用が認められる調整の内容としては、「個別計算所得等の金額の計算にあたり、いったん不動産の譲渡損益(会社等別利益額または会社等別損失額)を除外したうえで、別途計算された年度別利益配分額のうち自社分を加算する」というものです。
これだけじゃ全然わからないですけど、不動産の譲渡益が発生したときに、(当期を含む)過去5対象会計年度を対象に、国単位で不動産の譲渡損と相殺し、それでも譲渡益が余れば、その5対象会計年度にわたり均等配分する感じです(上記の年度別利益配分額はこれにより配分されたもの)。
具体的な計算の流れについては、PwCさんの本がわかりやすいと思います。
グローバル・ミニマム課税Q&A(PwC税理士法人(編)、PwC Japan有限責任監査法人(編))
上記のとおり、この特例は、国別の1年選択とされています。
ちなみに、この特例を適用する場合、上記のように過去対象会計年度の譲渡損を使ったり、過去対象会計年度に譲渡益を配分したりするので、過去対象会計年度の国別実効税率の再計算も必要になります(また今度書きますが、再計算国別国際課税額が生じるケースがあるということです)。
3. 特例の趣旨
特例の趣旨は、不動産譲渡益の平準化ということなんだと思いますが、不動産の譲渡損益は国によって税務上の取扱いが異なるイメージなので、それにより過年度分も含めて実効税率がどう動くかは体系化できていません。
詳しい人は教えてください。いや、やっぱりいいです。
今回はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。