1. HOME
  2. ブログ
  3. 国際税務
  4. グローバル・ミニマム課税
  5. グローバル・ミニマム課税:当期純損益金額に対する調整⑨ 給付付き税額控除額など
BLOG

佐和周のブログ

グローバル・ミニマム課税

グローバル・ミニマム課税:当期純損益金額に対する調整⑨ 給付付き税額控除額など

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。

今回は、(特例適用前)個別計算所得等の金額の計算という文脈で、当期純損益金額に対する調整の9つ目、給付付き税額控除額などに関する調整について。

 

1. 調整内容要約

まず、さっぱりと調整(加減算)内容を書くと、以下のとおりです。

+適格給付付き税額控除額等に関して、当期純損益金額に係る収益の額としていない金額
-税額控除の額(適格給付付き税額控除額等)に関して、当期純損益金額に係る収益の額としている金額

ただし、
適格給付付き税額控除額等=適格給付付き税額控除額または適格適用者変更税額控除額
スポンサーリンク

 

2. 給付付き税額控除額&適用者変更税額控除額とは

日本では、給付付き税額控除という用語は個人所得税に関して使われることが多いですが、その基本的なイメージは「税額控除+現金給付」(現金給付は「控除額>税額」の場合)という感じです。グローバル・ミニマム課税でいう「給付付き税額控除」は、当然ながら企業に関するものですが、上記と同様に給付と税額控除のセットです。研究開発などの特定の活動に対して補助金を出すような感じで、給付付き税額控除を措置してる国があるということですね。refundable tax creditという言い方のほうが馴染み深いかもしれません。

もう1つ、「適用者変更税額控除」というものもありますが、これはmarketable transferable tax creditという英語に対応するものです。この「適用者変更」というのは、税額控除の権利を第三者に譲渡できるという意味ですが、これについてはあんまり詳しくないので流します(ごめんなさい)。

3. 適格・非適格 給付付き税額控除額

ここからは、給付付き税額控除のほうに限定して書きますが、グローバル・ミニマム課税では、給付付き税額控除額を適格と非適格に分けます

適格給付付き税額控除額とは、国等から受ける給付付き税額控除の額のうち、その国等の租税に関する法令において給付付き税額控除を受ける要件を満たすこととなった日から起算して4年以内に現金等による支払いが行われる部分の金額をいいます。

一方、非適格給付付き税額控除額というのは、それ以外です。

4. 適格・非適格 給付付き税額控除額に関する調整

グローバル・ミニマム課税における取扱いとして、適格給付付き税額控除額は(「税額控除」ではなく)「収益」として取り扱われます。

なので、当期純損益金額に係る収益の額に含まれていなければ、加算調整を行います。

シンプルに言えば、補助金扱いということですね。

ついでに言うと、法人税等の控除項目として取り扱われていれば、当期対象租税額の計算上は足し戻すこととなりますが、これについてはまた別の機会に書きます(要は、実効税率の分母子について整合的に取り扱うということです)。

一方、非適格給付付き税額控除額のほうは(「収益」ではなく)「税額控除」として取り扱われます。

なので、当期純損益金額に係る収益の額に含まれていれば、減算調整を行います。

ついでに言うと、法人税等の控除項目として取り扱われていなければ、当期対象租税額から差し引くことになりますが、これについてもまた別の機会に書きます。

スポンサーリンク

 

5. どっちが有利か

まとめると、適格・非適格の取扱いの違いは、収益扱いか税額控除扱いかという違いです。

実効税率への影響という観点でどっちが有利かというのを考えると、分母への加算か分子からの減算かという違いなので、同額であれば分母への加算のほうが実効税率は高くなります(算数の問題です)。適格給付付き税額控除額のほうが有利な取扱いってことですね(たぶん)。

今回はここまでです。

では、では。

グローバル・ミニマム課税に関するオススメの書籍こちら

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

関連記事

佐和周のブログ|記事一覧
スポンサーリンク