グローバル・ミニマム課税:当期純損益金額に対する調整⑧ 発生年金費用(収益)

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。
今回は、(特例適用前)個別計算所得等の金額の計算という文脈で、当期純損益金額に対する調整の8つ目、発生年金費用(収益)に関する調整について。
Table of Contents
1. 調整内容要約
まず、さっぱりと調整(加減算)内容を書くと、以下のとおりです。
+ (1)>(2)の場合の超過額
- (2)>(1)の場合の超過額
ただし、
(1) 退職年金等に係る年金基金に対する費用の額で当期純損益金額に係る費用の額としている金額
(2) 年金基金に対し支払う掛金の金額
●収益に関する調整
+ 年金基金から支払を受けたものの金額
- 年金基金が退職年金等に係る掛金の運用により得た収益の額で当期純損益金額に係る収益の額としている金額
費用サイドについてごくごく簡単に言うのであれば、会計上の費用を税務上の損金算入額(年金基金に対する拠出額)に置き換える感じです。
2. 発生年金費用(収益)とは
年金基金に係る費用については、会計上は退職給付費用として計上されますが、これがたぶん「発生年金費用」です。
「発生」の部分は、英語だとaccruedなので、逆に損金算入ベースではないという意味合いと思われます。
また、年金基金の運用収益如何によっては、退職給付費用がマイナスになるので、「(収益)」が付いているんだと思います。
3. 発生年金費用(収益)に関する調整
日本もそんな感じですが、年金基金に係る費用については、税務上は年金基金に対する拠出額をもって損金算入額としている国も多く、そうすると、実効税率の分母子にズレが生じるらしいです(ほんとにそうかはわかりませんが)。
なので、端的には、実効税率の分母である個別計算所得等の金額には、(会計上の退職給付費用ではなく)年金基金に対する拠出額が反映されるようにしておけばいいということです。
そのため、例えば、年金基金に対する費用の額が年金基金に対し支払う掛金の金額を上回っていれば、その超過額を当期純損益金額に加算します(逆なら逆)。
収益のほうも同じ要領で、年金基金に係る収益の額が当期純損益金額に含まれていれば、これを減算することで個別計算所得等の金額から除外し、逆に年金基金からそういう収益の支払いを受けた場合には、これを当期純損益金額に加算します。
4. よくわからない
この調整自体は、発生ベースから現金ベースへの置換えみたいな感じで、意味合いは容易に理解できます。
ただ、理解が難しいのは、上記は明らかに超一般的な一時差異の調整だという点です。言い換えると、放っておいても税効果で調整されるはずなのに、なんでこれだけ調整を入れるのかということで、私にはロジックはよくわかりません。
グローバル・ミニマム課税が難しいなと思うのは、こういうところかなあと思います。
今回はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。