グローバル・ミニマム課税:当期純損益金額に対する調整⑥ 政策上の否認費用

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。
今回は、(特例適用前)個別計算所得等の金額の計算という文脈で、当期純損益金額に対する調整の6つ目、政策上の否認費用に関する調整について。
Table of Contents
1. 調整内容要約
まず、さっぱりと調整(加算)内容を書くと、以下のとおりです。
-(該当なし)
2. 政策上の否認費用とは
グローバル・ミニマム課税において「政策上の否認費用」と呼ばれるものには、違法支出と罰金等が含まれます。
違法支出とは、違法とされる金銭その他の利益の供与をいい、例えば、以下または外国におけるこれらに相当するものが該当します。
・不正競争防止法第18条第1項⦅外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止⦆に規定する金銭その他の利益
罰金等とは、罰金及び科料並びに過料(これらに相当するものを含む)をいいます。
国税庁のQ&Aによると、加算税や延滞税は行政制裁であり、罰則的な性質を有するものであることから、過料に相当するものとして罰金等に含まれる一方、利子税は罰則的な性質を有するものではないことから、罰金等に含まれないとされています。
3. 政策上の否認費用に関する調整
政策上の否認費用のうち、違法支出については、当期純損益金額に対して、その全額を加算します。
一方、罰金等については、5万ユーロ相当以上のもののみを加算します。
この5万ユーロの判定は、同一の行為につき、定期的に継続して罰金等に処される場合には、各対象会計年度において処される罰金等の金額の合計額をもって行うこととされています。つまり、同一の行為について、是正措置が取られるまで複数回にわたって罰金等に処されるような場合には、その複数回の罰金等の金額を合計して判定するということです。逆にいうと、速度超過による交通反則金に複数回処された場合であっても、同一の行為につき罰金等に処されたものではないことから、その複数回の交通反則金の額を合計する必要はありません(法基通18-1-45)。
違法支出や罰金等は、一般に会計上は費用として処理されますが、多くの国において、税務上は損金算入が認められません。そして、損金不算入となるのは、汚職防止等の政策上の理由であり、だからこそ、「政策上の否認費用」という呼び方をします。
政策上の否認費用に関する調整はこの点を踏まえたもので、それを当期純損益金額に加算することで、実効税率が歪まないように(高く計算されないように)しているという整理です。
今回はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。