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佐和周のブログ

雑感

オススメの書籍紹介:『決算・監査コストの最適化マニュアル』

このブログでは、不定期でオススメの本をご紹介しています。

今回は『決算・監査コストの最適化マニュアル』です

今回は、『決算・監査コストの最適化マニュアル』(浅野 雅文さん、武田 雄治さん著)という本です。

 

著者の武田先生(武田さん)に送って頂きました(ありがとうございました!)

なお、Amazonのリンクは画像代わりに使っているだけで、現時点でAmazonの在庫はゼロなので(中央経済社さんの基本スタイル)、どこか別のところで探して頂ければと思います。

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この本のすごいところ

早速ですが、この本のいいところは、ずばり「切り口」です。

「決算・監査コストの低減」というのは、よく議論されるテーマですが、その切り口で本を1冊書けてしまうところがすごい!

会計基準にも監査基準にも、どこにも書いていないことなので、完全に著者の方々のご経験ということですね。

類書も全くないわけで、もうそれだけで十分価値があると思います。

どんなことが書いてあるか

じゃあ、具体的に、この本に「どういうことが書いてあるか」です。

さっぱりとまとめようと思ったのですが、私は監査法人にいた頃から、とにかく内部統制監査が苦手でした。なので、うまくまとめることができません。

ということで、以下に章立てを書き出してみました。

第1部 監査コストをめぐる概要
第1章 近年における監査報酬の推移と今後の動向
第2章 そもそも監査報酬はどのように決まるのか?~監査報酬計算のメカニズム

第2部 決算対応と財務諸表監査コストの最適化
第3章 監査対応・監査工数が劇的に減る決算時の内部統制
第4章 決算・監査対応コスト最適化のための内部監査のポイント
第5章 決算・監査対応を省力化するための経理業務改革

第3部 内部統制評価と内部統制監査コストの最適化
第6章 内部統制対応コストの最適化
第7章 内部統制のマクロレベル評価範囲最適化の実務
第8章 内部統制のミクロレベル評価範囲最適化の実務
第9章 DX時代の内部統制~業務簡素化による対応コストの削減

まず、第1部が面白そうですよね。「こういうの、まとめてほしかった」と多くの人が思う内容だと思います。

第2部「これは読まないと」と思わせる内容で、実際読んでみてもそう思いました。

第3部は、「へぇー」という感想しかないですが(純粋に私が内部統制監査を苦手としているだけです)、ただただ勉強になりました。

以下では、主に第1部と第2部に関して、面白いと思ったことを挙げていきたいと思います。

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監査法人を交代することで監査コストは下がるか?

まず興味深いと思ったのは、「第1章 近年における監査報酬の推移と今後の動向」の「第3節 監査法人を交代することで監査コストは下がるか?」という部分です。

本質的な監査報酬の最適化手段ではないと思うのですが、「決算・監査コストの最適化」という観点では、監査法人の変更は、議論の俎上に載せるべきものだと思います。

このあたり、この本は「監査報酬実態調査」などの各種調査報告書から、監査法人変更後の監査報酬の増減など、概括的に分析してくれています。「監査法人を変えたらどうなるか?」という議論を「何となく」ではなく、こういうデータに基づいて行うことは重要だと思います。

特に企業の方に読んで頂きたいのは、第3節の「(2) 安さを求め監査法人を安易に交代することの企業側のリスク」という部分です。

もちろん例外はあると思うのですが、報酬引下げ目的の監査法人変更に伴うリスクについては強く同意します。

この本には書いてないですが、「安い≒やばい(悪い意味)」というのが一般的な認識だと思いますし、そのことは外部(投資家など)もわかっているので。あとは、個人的な印象として、よほどしっかりした体制がないと、監査の品質の低下がそのまま経理の品質の低下につながる面もあると思います。

監査法人の変更後に、「あれでもまだマシなほうだったんだな」という感想はよく聞くので、そういうことも事前に考えておいたほうがいいかもしれませんね。

監査報酬計算のメカニズム

もう1つ、「第2章 そもそも監査報酬はどのように決まるのか?~監査報酬計算のメカニズム」の「第3節 監査法人も簡素化・省力化したい?」という部分も面白かったです。

監査法人の中にいれば当然の内容かもしれませんが、企業の方々にとっては、監査報酬計算のメカニズム自体について、何らかの発見があるかもしれません。監査法人は、報酬交渉のときに、割と内部事情を話す(≒法人内の都合を押し付ける)傾向にあると思うので、もともと何となく監査報酬の決まり方はイメージされているとは思うのですが。

興味深かったのは、監査法人の側も、「監査報酬は安くてよいから、効率的に監査を終えられるようにしたい」と思っているという箇所です。実際に、そういうニーズがあるそうで、こういう現場感覚は、やっぱり参考になるなと思いました。

「決算作業を効率化する→従来の監査手続きが不要になる→別の余計な監査手続きが行われる」という、私の歪んだ思考回路は、これを機に改めようと思います。

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決算・監査対応を省力化するための経理業務改革

そして何より、「第5章 決算・監査対応を省力化するための経理業務改革」です。

決算早期化ファンの私には馴染み深い内容ですが、すごくいいなと思ったのは、「主体的に監査を受ける」というフレーズです。端的には、監査の目的や手続きを理解したうえで監査を受けないと、監査工数削減もおぼつかないということですね。

書いてあったのは「第2節 決算・監査の工数を削減する方法」の「(6) 監査を理解する、監査に協力する」という部分で、うん、うん、と頷きながら読みました。このあたりは、おそらく企業の方々のほうが感じられるところが多いと思います。

浅野式A→D→S→I

第6章以降は、ちょっと私には難しかったですが、「第9章 DX時代の内部統制~業務簡素化による対応コストの削減」の「浅野式A→D→S→I」というコンセプトには興味を惹かれました。

「~式」というのが、まずいいですね。「術式(展開)」(猗窩座)とか「公文式」(野村萬斎)とか、「式」がつくと、それだけで強そうな感じがします。

ちなみに、A→D→S→IのIはIgnoreの略で、「監査法人を無視する」という意味の効率化かと思いましたが、違いました。重要性がなく、経営判断も要しない業務に関する対応で、要は何も手当てせず、リスクを受容するという意味合いとのことです。言われてみると確かにそうですが、こうやってまとめてもらえると、頭が整理されますね。

全体として、「そんなに上長の承認いるか?」みたいな文脈で書かれているので、「へぇー」と納得しながら読みました。メッセージがシンプルなので、内部統制監査が苦手な「佐和式」(←影響を受けた)でも十分理解できるわかりやすさでした。

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監査報酬の増額にお悩みの方にオススメ

そろそろ真面目さが失われてきたので、このあたりでまとめます。

本書は、経理部門の責任者の方(それに近い方)など、監査報酬の交渉に臨まれる方にオススメです。というか、交渉相手の内情を知っておくという意味では、必読だと思います。

また、経理部門で実務をやっておられる方にもオススメです。「資料の作り方で監査工数が変わる→監査報酬も変わりうる(「変わる」とは言い切れず)」というイメージがつかみやすいと思うので。

監査報酬は、企業の外部で独立して水準が決まるものではなく、あくまでも企業の内部的要因に応じて水準が決まるものということですね。決してパートナーやマネジャーの法人内の評価維持のために値上げ要請してるわけではないってことです()。

あとは監査法人側がちゃんと決算効率化を評価してくれて、余計な監査手続きをカットし、監査報酬を引き下げてくれることを祈るばかりです。

この本は新たな視点を与えてくれるので、色んな気づきがあり、だいぶ余計なことを書いてしまいました。そういう意味でも、「考えさせられる本」だと思います。

こういう本がもっと出るといいのになあ。

著者の方々、ご執筆、お疲れ様でした!

今日はここまでです。

では、では。

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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