NHKの700億円規模の経費削減の内訳 【経営計画でチェック】

週末なので、雑談です。
目次
先週書いた記事(NHKの受信料値下げ見込み)
先週、以下の記事を書いて、NHKが2023年度までに事業支出を約550億円削減する見通し(対2020年度比)についてコメントしました。
NHKの受信料値下げ見込み(2023年度)を経営計画でチェック
この550億円の事業支出削減には2つの構成要素があって、具体的には、「700億円規模の経費削減」と「150億円規模の重点投資」です(まとめると以下の図のような感じ)。

こども君からの質問
その記事では、以下のようにコメントしたのですが、こども君から、「どこでそれが見られるの?」という質問があり、一緒に内容を確認することになりました。
NHKの事業支出の内容に興味のある方は、この700億円の経費削減内容をチェックされるといいと思います。
内容によっては、「努力して引き下げるんだなあ」というものもあれば、「そもそも今の事業支出に無駄が多すぎるのでは?」というものもあると思うので(私はざっと見ただけで、特に精査はしてません)。
なので、今日は700億円の経費削減の中身を見ていきます。
子供が興味を持ったことに付き合うのは、親としては普通のことなのかもしれませんが、ふと自分でも「何やってんのかな」と思う瞬間はあります。
700億円の経費削減の内訳(5項目)
700億円の経費削減の内訳について、経営計画(「NHK経営計画(2021-2023年度)」)には明確に示されていません。
ただ、もう1つ、経営計画における収支見込みの算定根拠(「NHK経営計画(2021-2023)における収支の見通しの算定根拠」)という資料があり、その中の「構造改革について」という項で、700億円の経費削減の内訳(5項目)が示されています。
それによると、700億円の経費削減の全体像は以下のとおりです。

(「NHK経営計画(2021-2023)における収支の見通しの算定根拠」をもとに作成)
以下、気になった項目を見ていきます。
(1) スリムで強靭なNHKに向けた番組経費などの見直し
この中で最も削減規模が大きいのが300億円超の「番組経費などの見直し」という項目です。
その内容の説明として、以下が含まれています(箇条書きの1つ目)。
NHKならではのコンテンツ制作に経営資源を集中させるため、制作の総量を削減し、それぞれのコンテンツの質を高める。
番組制作の総量を減らせば、コストを削減できるのは当然だと思います。
普通はそれに伴って売上が減少する可能性があるのですが、こういうとき受信料収入は強いですね。
コンテンツの質が高まれば、番組制作が減っても誰も文句はないのかもしれません。
(2) 設備投資などの固定的経費への斬り込み
次に大きいのが、「設備投資などの固定的経費への斬り込み」という項目で、削減規模は150億円超です。
この項目、「切り込み」じゃなくて、「斬り込み」なので、ちょっと物騒ですね。NHKだけに、時代劇テイストなんでしょうか。
業種的におそらく設備投資は大きくなるので、コスト削減にあたって、設備投資の見直しは必須だと思います。
ただ、経営計画には以下の記述があるほか、金額の規模からいっても、それほど大きな削減を意図しているわけではなさそうですね。
老朽化した東京・渋谷の放送センターや各地の放送会館の建て替えを進める一方、設備のシンプル化・集約化・クラウド化を推進して保有設備の削減を進めます。
(3) その他
モノという意味で、設備投資を見直すのであれば、ヒトという意味で、人件費の見直しにも触れてあるのかと思ったのですが、このあたりは断片的です。
「営業経費の構造改革」という項目では、以下の記述があり、これは広い意味では人件費のお話ですね。
訪問によらない効率的な営業活動へ移行するため、外部委託法人などへの委託費の見直し、訪問要員の削減などを進める。
また、「管理間接業務のスリム化・高度化」という項目では、「職員採用の規模の見直し」には触れられています。
これは逆に言うと、既存の職員は見直し対象にならないということなんでしょうか。
(1)の番組経費の見直しにも人件費削減は含まれるのかもしれませんが、「斬り込み」という豪快なワードを選択した設備費に比べて、人件費のほうはちょっと消極的な印象を受けます。
最後に
全般的に、あんまり細かく見る必要は無さそうな資料でした。
最も印象に残ったのは、「スリムで強靭なNHK」や「新時代へのチャレンジ」等々の言葉の選択で、このあたりになんとなく「民間じゃない」テイストが漂っているような気がしました。
今日はここまでです。
では、では。
受信料値下げの原資であるNHKの剰余金が、本当に報道されている額だけなのか、財務諸表で確認しています。
NHKの受信料値下げ見込み(2023年度)を経営計画でチェック
2023年度に予定されている受信料値下げ(10%程度)について、その規模感を経営計画で確認しています。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。