1. HOME
  2. ブログ
  3. 会計
  4. 会計一般
  5. NHKの受信料値下げ見込み(2023年度)を経営計画でチェック

BLOG

佐和周のブログ

会計一般

NHKの受信料値下げ見込み(2023年度)を経営計画でチェック

週末なので、雑談です。

こども君からの質問

以前にNHKの剰余金のことを教えてから、こども君はずっとNHKの動向をモニターしているようです。そんな小学生いるか?

で、今週聞いてきた内容が以下です(要約してます)。

  • ニュースで受信料引下げの原資が700億円って言ってる。受信料は10%くらい引き下げられるってこと?
  • 新聞にNHKの剰余金が1,280億円って書いてあるけど、これと700億円の原資の関係は?
  • まずは、今週報道された内容のうち、数字が関係する部分を確認してみました。書き方や内容はまちまちですが、基本的には1月13日に公表されたNHKの経営計画をもとにしたもので、要約すると以下のような感じです。

    (1) 2023年度に受信料収⼊(年間約7,000億円)の1割相当の値下げを行う
    (2) 値下げの原資としては、支出削減などで、事業規模の1割にあたる700億円を確保する
    (3) 2021〜2023年度の3年間で、700億円規模の経費を削減する⼀⽅、重点項⽬に150億円程度を投資する(2023年度の事業⽀出は6,800億円の見込み)
    (4) NHKの繰越剰余⾦は近年増加傾向で、2019年度末の残⾼は1,280億円に上る(2020年度末には1,450億円に達する見通しという報道も)

    大枠はこども君の言っていたとおりですが、これって、わざと分かりづらく報道してるんですかね。

    なお、NHKの経営計画を見る限り、(4)は計画自体には書いてなさそうです。

    スポンサーリンク

     

    2020年度予算で大まかな財務数値を把握

    とりあえず、概要を把握したほうがいいので、今年度(2020年度)の予算から見てみましょう(以下、単位はすべて「億円」です)。

    (出典:NHK経営計画(2021年度-2023年度))

    受信料収入は6,974億円(事業収入の一部)なので、上記(1)の受信料収入の水準(7,000億円)のイメージはOKですね。

    一方、事業支出は7,354億円で、事業収支差金は△149億円(赤字)です。

    事業収支差金の△149億円について、「受信料を低く抑えている」と捉えるか、「事業支出に無駄がある」と捉えるか、は人によると思います。

    いずれにせよ、受信料を引き下げるためには、原理的に事業支出の削減が必要です(現状の剰余金を無視すれば)。

    スポンサーリンク

     

    経営計画(2021年度~2023年度)で事業支出の削減見込みを把握

    なので、次はNHKの経営計画(2021年度~2023年度)で、事業支出の削減見込みについて見ていきましょう。

    上記の2020年度予算と、3年後の2023年度計画を比較すると、以下のような感じです。

    (NHK経営計画(2021年度-2023年度)をもとに作成)

    これを見れば、上記(3)の2023年度の事業⽀出の計画値(6,800億円の見込み)は理解できます。

    つまり、2020年度予算と比べると、約550億円(554億円)の事業支出を削減するということですね。

    700億円の経費削減と150億円の重点投資

    上記(3)では、この550億円の事業支出削減を2つの要素に分解しています。具体的には、「700億円規模の経費削減」と「150億円規模の重点投資」です。

    つまり、△550=△700+150ということで、まとめると以下の図のような感じです。

     

    NHKの事業支出の内容に興味のある方は、この700億円の経費削減内容をチェックされるといいと思います。

    内容によっては、「努力して引き下げるんだなあ」というものもあれば、「そもそも今の事業支出に無駄が多すぎるのでは?」というものもあると思うので(私はざっと見ただけで、特に精査はしてません)。

    【2021年1月追記】
    結局、こども君にチェックさせられました。以下の記事にまとめています。
    NHKの700億規模の経費削減の内訳 【経営計画でチェック】 
    スポンサーリンク

     

    受信料引下げの原資である700億円はどこから?

    上記(2)のとおり、受信料引下げの原資は700億円です。

    この水準は700億円の経費削減と同じですが、両者の関係ははっきりわかりません(上記のとおり、150億円の新規投資があり、トータルで見た事業支出の削減は550億円止まりなので)。

    NHKの経営計画によると、上記(2)の受信料引下げ(還元)の原資700億円の確保にあたっては、事業支出の削減に加えて、以下のような対応を考えているようです(文章の切れ目がよくわからなかったので、適当な箇条書きです)。

  • さらなるコストの圧縮
  • 新放送センターの建設計画の抜本的な見直し
  • 経営努力によって生み出した剰余金を積み立てる仕組みの導入
  • どさくさに紛れて、剰余金は積み立てなくていいと思いますけどね。いったん積み立てて、後々還元するということかもしれませんが。

    いずれにせよ、受信料収入は現状で7,000億円程度なので、この計画どおり700億円の原資が確保できたら、受信料は10%引き下げられる計算にはなります。

    スポンサーリンク

     

    剰余金も受信料引下げの原資

    次に、現状の経営計画上は明示されていない(と思われる)剰余金のお話です。

    上記(4)のとおり、NHKには1,280億円の繰越剰余⾦(2020年3月末)があるようです。 報道されている2021年3月末の残高の見込み(1,450億円)については、よくわからないですけど。

    いずれにせよ、剰余金は過去の利益が蓄積したストックの数値なので、新たに確保する予定の700億円の原資とは別に、受信料引下げの原資になります。

    単純にいうと、受信料を回収しなければ、事業支出だけが出て行くので、自動的に剰余金は減少します。逆に言うと、剰余金があれば、それを使って受信料を引き下げられるということですね(厳密には、キャッシュも必要ですけど)。

    つまり、NHKの経営計画が言っているのは、「これから事業支出を削減して、受信料を引き下げます」ということが中心だと思いますが、「いやいや、まず今留保している剰余金を原資として、受信料を引き下げてからの話でしょう」という議論は成立するように思います。

    NHKの剰余金はどれだけある?

    1,280億円というNHKの繰越剰余⾦の水準ですが、以下の記事で中身を確認しています。

    NHKの剰余金を還元したら受信料はどの程度引き下げられるか

    結論としては、「本当に1,280億円だけの議論でいいの?」というところは、よく考えたほうがいいと思います。

    これは繰越剰余金だけの議論で、NHKの単体の剰余金(全体)はもっと大きいので。

    さらにいえば、連結の剰余金は単体の剰余金よりも約870億円大きいです。おそらくですが、連結子会社に剰余金が溜まってるんでしょうね。この点は、経営計画に以下の記述があるので、今後は対応予定なんでしょうか。

    〇NHKの関連団体については、「新しいNHKらしさの追求」に向けて機能・役割を見直し、子会社をはじめとした全体の規模を縮小するとともに団体の数を削減してスリムで強靭な体制を構築します。
    ○子会社については、改革をよりスピーディーに進めるため、中間持株会社の導入を視野に業務・要因の効率化や管理機能の集約など、ガバナンスの強化を進めます。

    中間持株会社はいらなそうですけどね。ところどころ、こういうのがぶっこんであるので、読み応えのある経営計画だと思います。

    スポンサーリンク

     

    最後に

    こども君にはこの内容を伝えましたが、よく理解できたようです。

    2つの質問に対する回答は、シンプルには以下のような感じです。

    ・ニュースで受信料引下げの原資が700億円って言ってる。受信料は10%くらい引き下げられるってこと?
    ➡ そのとおり

    ・新聞にNHKの剰余金が1,280億円って書いてあるけど、これと700億円の関係は?
    ➡ よくわからないけど、あまり関係なさそう。今後の経費削減などで700億円の受信料引下げ原資を確保するみたい。逆に、現状のバッファである剰余金の1,280億円には、あまり手を付けないのかな。

    と書いていたら、ちょうど「総務省の有識者会議がNHKの受信料引き下げに繰越剰余金を活用する制度案をまとめた」みたいなニュースが出ていました。またこども君とNHKの話をしないといけないのか。。。

    私は経営のことはよくわかりませんし、ましてやNHKの公共メディアとしての位置付けも全く理解していません。ただ、シンプルに考えると、まずは過去に蓄積した剰余金を吐き出す形で受信料を引き下げて、その後、事業支出削減分を追加で受信料引下げの原資にする方がスッキリするように思います。

    なお、以前にも書きましたが、こども君にお付き合いしているだけで、私はNHKに対して全く興味がありません。また、「サラメシ」を見るためなら、別に受信料を払うのも構わないです。一方で、NHKに対して問題意識を持っている人たちには、この経営計画はツッコミどころが多そうですね。

    今日はここまでです。

    では、では。

    ■あわせて読みたい
    NHKの剰余金を還元したら受信料はどの程度引き下げられるか

    受信料値下げの原資であるNHKの剰余金が、本当に報道されている額だけなのか、財務諸表で確認しています。

    NHKの700億規模の経費削減の内訳 【経営計画でチェック】 

    「番組経費などの見直し」や「固定的経費への斬り込み」など、経費削減の内訳を確認しています。それにしても、「斬り込み」って。。。

     

    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

    関連記事

    佐和周のブログ|記事一覧

    こどもCFOブログ|LINK

    スポンサーリンク