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佐和周のブログ

会計一般

NHKの剰余金を還元したら受信料はどの程度引き下げられるか

今日は平日ですが、雑談です。

こども君からの質問

こども君がニュースか何かで見たのか、「何でNHKに剰余金があるの?」と聞いてきました。そもそもNHKに受信料を払っていることも知らなかったようです。

全く興味がないニュースですが、NHKについて、「一定水準を超える繰越剰余金を受信料引下げに充てること」が検討されているみたいですね。

こども君に解説する約束をしたので、詳しい分野でも興味がある分野でもないのですが、昨夜の夕食後にちょっとだけ調べ物をしました。なので、今日はこのテーマでサラッと書きます。

最初に結論を書きますが、今検討されていることは、数字だけで見ると、根本的な解決につながる話ではなさそうです。

では、始めます。

NHKの剰余金

まず、「NHKの剰余金はどれくらいあるのかな」と思って探してみると、1,280億円という数字に言及している報道記事がありました。

次に、NHKの直近期の貸借対照表を見てみたのですが、その数字がすぐには見当たらなくて、「あれ?」と思っていたら、個別財務諸表のうち「一般勘定」の「繰越剰余金」の金額がちょうどその金額でした。いきなり難しいな。

NHKの貸借対照表(単体)

せっかくなので、皆さんも普段はご覧にならないであろうNHKの財務数値のイメージをどうぞ。

2020年3月期のNHK全体の貸借対照表を要約すると、以下のような感じです(単位は、ここから全部「億円」です)。

 

純資産は7,890億円で、報道されている剰余金1,280億円はこの中に入ってるってことですね。

純資産の内訳

次に、純資産の中身を確認してみました。

 

純資産の内訳としては、「承継資本・固定資産充当資本」が4,982億円で、「剰余金」が2,907億円です。

そして、「剰余金」2,907億円のうち、「建設積立金」が1,694億円あり、残りの「繰越剰余金」が1,213億円です。

さらにいうと、この「繰越剰余金」1,213億円のうち、一般勘定分が1,280億円(別勘定で△67億円)となっており、これが報道されている数字ですね。

ちなみに、「剰余金」のうち、「繰越剰余金」以外の部分、つまり、「建設積立金」1,694億円は、将来の建設投資のための積立金らしいので、普通の感覚だと受信料引下げの原資に転用できそうです(会計の積立金はキャッシュの積立金とは別概念なので)。固定資産充当資本も過去に剰余金から組み入れた部分があるみたいですが、そこまで言わないとしたら、「剰余金」の全体(2,907億円)は受信料値下げの潜在的な原資として考えてもいいのかもしれません(適当)。

以上が個別財務諸表(個別貸借対照表)の話です。

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NHKの連結貸借対照表

もう1つ、NHKには連結財務諸表(連結貸借対照表)があります。

NHKって、結構子会社があるんですよね。2020年3月末で12社です(すべて連結子会社)。

連単比較

連単の貸借対照表を見比べると、以下のような感じです。

 

そんなにサイズ(総資産)は変わらないですね。

ただ、純資産に着目すると、単体の7,890億円に対して、連結が8,842億円で、結構差があります(952億円の差)。そして、以下のように、純資産の差952億円の大半(870億円)が剰余金の差です。

 

本体の損益が注目されているので、本体に利益が残らないように、子会社に利益を移したのでしょうか(適当)。

NHKが会計検査院に怒られた件

そういえば、NHKは以前、子会社に剰余金を溜めすぎて、会計検査院に怒られてましたよね(個人的なイメージですけど)。

気になって探してみたら、ありました。

以下は、平成28年度(2016年度)の会計検査院の報告書からの抜粋です(興味がある方は、会計検査院のウェブサイトにかなり詳細な情報が出てるので、そちらをどうぞ)。

関連団体の27年度末における剰余金に相当する額をみると、子会社13社の利益剰余金は計948億余円、関連会社4社の利益剰余金は計150億余円、日本放送協会健康保険組合を除く関連公益法人等8団体の一般正味財産期末残高等は計153億余円となっている。

(出典: 「平成28年度決算検査報告」(会計検査院)
https://report.jbaudit.go.jp/org/h28/2016-h28-mokuji.htm 2020年11月10日に利用)

報告書では、当時の「子会社13社の利益剰余金は計948億余円」とあります。で、2020年3月末の子会社に対する保有割合は64.1%~100%でまちまちです。そうすると、数年経ってはいますが、上記の連単の剰余金の差870億円は、だいたい子会社の剰余金と考えても、そんなに間違ってなさそうです。

配当でNHK本体に付け替えればいいようにも思いますが、きっと複雑な事情があるんでしょうね。

いずれにせよ、1つの考え方として、子会社の剰余金も含めた、連結の剰余金3,777億円を値下げの原資に使うという考え方もあると思います。

債券をいっぱい持っているようなので、流動性の面でも問題なさそうですし(適当)。

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NHKの損益計算書上の受信料

次に、2020年3月期の損益計算書を見ます(受信料を見たいので、単体の数字です)。

 

一般勘定に限定して、トップラインとボトムラインだけ見ると、「事業収入」のうち「受信料」の収入は7,115億円であり、最終利益に相当する(と思われる)「事業収支差金」は220億円です。

あんまり規模感のイメージがわかないかもしれませんが、ローソンの連結売上高がだいたい7,300億円くらいなので(2020年2月期)、売上高だけで見ると、それくらいのサイズですね(適当)。

ざっくりですが、受信料収入に占める利益(事業収支差金)の割合は3%程度なので、そんなに利益は出てないです。そもそも利益を出すべき事業ではないんでしょうね。

これで、問題となっている剰余金と受信料について、だいたいの数字が把握できました。

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色々と還元すると受信料はどれだけ下がるか

ここで本題です。

検討されているのは将来の話かもしれませんが、仮に今ある剰余金を還元したとしたら、受信料の水準はどうなるでしょうか。

剰余金の還元

一般勘定の繰越剰余金は1,280億円ですが、これを一気に受信料引下げの原資に充てると、1年限定で受信料を18%くらい引き下げられます(1,280億円÷7,115億円の単純計算です)。

次に、子会社の剰余金もすべてNHK本体に吸い上げて、建設積立金なんか無かったことにして、連結の剰余金3,777億円の全てを値下げの原資に使うと、1年限定で受信料を半分以下に引き下げられそうです。

 

毎年の利益の還元

ただ、剰余金というのは、基本的に利益が溜まったものなので、将来のことを考えると、利益が溜まらないようにすることが重要です。

そういう趣旨で、「今後は利益を出すな」ということになったら、受信料の水準はどうなるでしょうか?

2020年3月期の数字をベースにすると、超ざっくりで、受信料は3%程度しか引き下げられません(受信料に占める事業収支差金の割合)。これは単発ではなく毎年の話ではありますが。

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どれだけ意味のある議論なのか

こういう数字をご覧になって、どう思われるでしょうか。

個人的には、あんまりインパクトのある話だとは思いません

ちなみに、「利益を出すな」と言われると、だいたいの組織は費用を増やして利益を小さくすると思います。NHKについては、もともと利益は薄いですし、数字の話をするのであれば、利益や剰余金の話をするよりは、そもそもの費用サイドを精査したほうがいいのではないでしょうか。

もうちょっと言うなら、「NHKが現在の受信料の徴収方式を続けるべきなのか」とか、「そもそもNHKが必要なのか」とか、そういう根本のところを先に議論したほうがいいのかもしれません。

「剰余金1,280億円!」と聞くとインパクトがありますが、NHKは毎年7,000億円以上の受信料を集めてますからね。それと比べたら、1,280億円に関する議論は、小手先の対応に過ぎないという考え方もありそうです。

お断りと個人的な希望

ちなみに、私はNHKに興味がなく、放送法もその施行規則もよく知らないので、以上はざっと数字を見ただけの素人感覚のコメントです。なので、数字は適当なものとしてお考えください(チェックもしてないですし)。

また、NHKに対しては何らの個人的意見もないです。ただ、「サラメシ」だけは毎週すごく楽しみにしているので、それだけは残してほしいなと思います。受信料は今までどおり払うので。

こども君に解説したときの様子は、またもう1つのブログのほうに書きます。

【2021年1月追記】
こども君の反応については、もう1つのブログ(以下の記事)に書いています。
番外編:NHKに関するこども君の疑問

今日はここまでです。

では、では。

■あわせて読みたい
NHKの受信料値下げ見込み(2023年度)を経営計画でチェック

この記事を書いた後、NHKの経営計画が出て、2023年度の受信料値下げ見込みが公表されました。その経営計画についての感想を少し書いています。

 

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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