公認会計士が大手監査法人に就職することの3つのメリット
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今日は休日ではないのですが、雑談です。ちょっと仕事が忙しいので、仕事のことを書く気になれず、最近あったことを思いつくままに書きます。
目次
先日頂いたご質問
先日、大学生の方から、「公認会計士試験に合格したら、大手の監査法人に就職したほうがいいですか?」というご質問を頂きました。
私(=公認会計士)は大学卒業後すぐに大手の監査法人に就職したので、それ以外の選択肢はわからないのですが、「大手の監査法人に就職してよかった」と思える点はいくつかお伝えしました。
直接この記事に来られた方のために、私のプロフィールはこちらです。
結論を先に
結論を先に書くと、よかったことは以下の3つです。
(2) 多くの「他社事例」に関する知識を得られる
(3) 仕事の選択肢が多い
今日はこのテーマで書いてみたいと思います。
会計士試験を受験した経緯
そもそも、私がなぜ会計士試験を受けたかということですが、大学3年生のときに会計のゼミに入ったことがきっかけでした。
その先生のお話が凄く面白かったのと、周りが会計士試験の勉強をしていたので、深く考えず、自分も始めました。もうよく覚えていませんが、TACに通ったことと、えらくしんどかった(特に監査論が苦痛だった)ことだけは覚えています。あと、池袋校のスタッフの人がすごく親切で、どんな試験科目があるかなど、超初歩的なことを丁寧に教えてもらったことも妙に記憶に残っています。
要約すると、この時点では、ほぼ何も考えていませんでした。なので、大学生の方の「大手の監査法人に就職したほうがいいですか?」というご質問に対する最初の感想は、「そんなことまで考えていて、偉いなあ」です。
監査法人に就職した経緯
次に、会計士試験(当時の2次試験)に合格した後は、最初に面接に行って、そこで内定をもらった監査法人にそのまま就職しました。「どこに就職するか」についても、深くは考えていなかったということです。
今のところ、アドバイスをする資格のようなものは一切無さそうな雰囲気ですが、私の場合、仕事を選ぶときの優先順位だけははっきりしていました。
絶対に譲れなかったのは、「ある程度自由時間があって、ある程度時給が高いこと」です。
その意味で、当時の監査法人は理想的でした。大学4年生のときから非常勤で仕事をさせてもらっていたのですが、当時の管理の緩さは非常に快適なもので、大学生の生活からも比較的スムーズに移行できるレベルだったと思います。金融機関に就職した友人たちの話を聞くたびに、「監査法人というのはいいところだな」と思っていました(笑)
監査法人に就職してよかったこと
でも、振り返って、「大手の監査法人に就職してよかったな」と思うポイントは、それとは少し異なります。
もちろん、仕事が忙しい中でも、ちゃんと自由時間が確保できたのはよかったと思います。一方で、今考えれば当然なのですが、20代のころの給料の差なんか、大したことないですよね。それよりは、その時期にどういう経験が積めるかのほうが、先々のキャリアを考えると、よほど重要です。
さっきも書きましたが、このような観点から、振り返ってみて、大手の監査法人に就職してよかったと思える点は、以下の3つです。
(2) 多くの「他社事例」に関する知識を得られる
(3) 仕事の選択肢が多い
以下、順番に見ていきます。
(1) 凄い人たちと話ができる
正確には「大手の監査法人に就職すること」のメリットというよりは、「大企業の監査を担当できること」のメリットということになりますが、1つ目は、やはり20代前半から得難い経験ができることです。
私の場合、その時期に、大企業の役員や経理部長の方々と話ができたことは、今でも自分の財産になっています(相手の方々には迷惑以外の何物でもなかったと思いますが)。「ああ、そういう風に会社の数字を見るんだな」と思ったことは数えきれないです。
また、監査の過程で取締役会や経営会議の議事録を見られたことも、当時は非常に刺激的でした。
そういう環境にいると、ある程度大局的な視点から会社の数字(財務諸表を含む)を見る癖がつくはずなので、キャリアのスタートとして、この点は非常に大きいと思います。
周りにいい先輩がいれば、さらにいいですが、この辺りは、同じ会計士の人と話すよりも、企業の人と話したほうが力がつく印象です。
(2) 多くの「他社事例」に関する知識を得られる
次に、監査法人にいれば、そして少し努力すれば、促成栽培のように会計の知識を習得できます。
ただ、会計の理論だけであれば、試験でもやってますし、本を読めば済むことです。
大事なのは実践的な知識のほうで、その最たるものはいわゆる「他社事例」ではないでしょうか。つまり、色々な大企業の(ちゃんとした)経理処理が見られることが、大手の監査法人に勤めることのメリットだということです。
一応会計基準はありますが、それを実務に落とし込む方法は1つではないですし、財務会計から離れたところの管理手法も企業によってまちまちです。
そういう情報を頭に入れておいて、重要な分野で「だいたいこんな感じで処理すればいいな」という類型化ができていれば、将来的にもかなり役立つと思います。
その意味で、多くの企業の様々な実務に触れられるのは大きなメリットだといえます。
(3) 仕事の選択肢が多い
最後に、大手の監査法人には、仕事の選択肢が比較的多くあり、これもいいところです。
今は昔ほどではないと思いますが、例えば、私は若い頃にバリュエーション(価値算定)の仕事をいっぱいやりました。個人的にそれを望んだわけではないですが、DDなんかも含めて、監査以外の仕事をすると、確実に視野が広がると思います。
気が向けば、そういう監査以外の分野に進むことも可能で、その選択肢も多いと思います。
また、監査の分野に限っても、海外勤務がありますよね。海外に出ると、監査だけじゃなくて、色々な仕事のアレンジもあるし、経験の幅も広がると思います。加えて、大手の監査法人だと、英語を含め、海外勤務のための社内研修制度も整っているはずです。
そういった仕事の幅を広げるためのトレーニングが充実しているのも、いいところではないでしょうか。
最後に
これは、個人的なことで、監査法人に就職することのメリットとは言えませんが、私の場合、「個人よりチーム」という思想を多少なりとも持てたところが大きかったです。
ずっと比較的大きな企業の担当だったので、監査チームの人数は多かったのですが、(ごく少数の例外を除き)雰囲気のいい監査チームばかりだったので、個人主義の思想がかなり薄れたと思います。
逆に、私自身が「最初に監査法人に就職したのは間違いだった」と思うポイントはほぼないです。
敢えて言うなら、経理をやらずに監査を始めたので、企業の皆さんの気持ちがわからなかったことくらいでしょうか(今でもそうですが、昔は特に)。企業には企業の論理があって、監査法人には監査法人の論理があるので、あまり監査法人の論理にどっぷり浸からないほうがいいとは思います。これは個人の問題ですが、振り返ると、私が監査法人にいたときは、特に「経営」という感覚が欠落していたように感じます。
また、お断りしておきますが、私が大手の監査法人について書いたのは、おそらく「大手なら同じような感じだろう」という推測に基づいています。また、大手以外の監査法人については、仕事上のやり取りはあっても、内部から見たことはないので、何か言うことは適切ではないと思い、敢えて触れていません。「大手」に限定していることはそういう趣旨です。
思いつくままに書いたので、また何か思いついたら追記するかもしれませんが、とりあえず、今日はここまでです。
そういえば、もうすぐ論文式試験なんですね。まさか受験生の方がこのブログを見ていることはないと思いますが、こっそり受験生の方々のご健闘を祈っています。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。